『第43回特別展図録 大標本展 〜標本たちの物語をたどる』をいただきました

このたび知床博物館より『第43回特別展図録 大標本展 〜標本たちの物語をたどる』を寄贈いただきましたので、ご紹介させていただきます。

本書は特別展で展示された鳥の本剥製標本の図録です。手に取ってページを開くと標本の展示写真がずらりと並んでいますが、そのひとつ一つに採集日・採集地・経緯まで丁寧に記されています。生きていた鳥たちがどうして命を失い、知床博物館にたどり着いたのかが伝わってくる説明で、情景が目に浮かび、この鳥はどうだったのだろうと、ついあれもこれもと読んでしまいました。

さらに嬉しかったのは、ただの図録にとどまらず、標本づくりの裏話が漫画でたくさん紹介されていたことです。そのなかで私がいちばん印象に残ったのは、「冷凍庫を開けてみないと、中の標本材料がどんな状態なのかわからない」というエピソードです。これを読んだ瞬間に、大学院生の頃の自分の経験がよみがえりました。鳥の翼の研究のために標本づくりを自分でも試したことがあるのですが、あのときの緊張感や、作業の大変さは今でもよく覚えています。特にスズガモを解凍したときのことは忘れられません。とにかく強烈なにおいで、その日一日は鼻がまともに働かなくなるほど。仕事としてはとても苦労した瞬間だったのに、この図録の漫画で同じ状況がユーモラスに描かれていて、「そうそう、これだよ!」と声に出して笑ってしまいました。

研究の成果物としての標本には、科学的な価値や展示の意義があるのはもちろんですが、その背後にはこうした小さなストーリーや日常の工夫、時には笑ってしまうような瞬間がたくさんあります。しばらく標本製作から離れていましたが、標本や研究を身近に感じることができ、また研究に携わる人たちの姿が生き生きと浮かび上がってきました。皆さんも、標本や研究の世界に触れてみませんか。

もしこの図録に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、知床博物館協力会から購入することができます。特別展図録 大標本展のサイトの下部に通信販売についてのリンクがありますので、リンクをたどって、購入をご検討ください。

第43回特別展図録 大標本展 ~標本たちの物語をたどる
価格:税込1,700円 / 作成者:臼井平・能勢峰・能勢理恵