書籍紹介:100年よりも前、アメリカでバードウォッチングを広めたフローレンス

 皆さんが生きものや鳥に興味を持って、野外で観察するようになったのは、いくつの時でしたでしょうか?家の近くの河原、ちょっと遠いところの森、玄関から外の世界へ出て、目にするものはどれもこれも初めて。中でも、さまざまな色や形をして、不思議な動き方をする生きものは驚きに満ちていて、あなたの心を離さなかったことでしょう。

野鳥はともだち
バードウォッチングをひろめた
フローレンス・メリアム・ベイリー


文:ジェス・キーティング
絵:デヴォン・ホルズワース
訳:さくまゆみこ
出版社:子どもの未来社
本体:1800円+税
ISBN978-4-86412-449-2 C8797

 今回紹介する絵本の主人公は、まさにそんな冒険の一歩から鳥の世界に飛び込んでいきました。1ページずつめくっていくと、フローレンスの経験を追体験できるのですが、そこに描かれている植物や花、動物、鳥たちは色鮮やかで深みのある独特の雰囲気を持っているので、別世界に踏み入れたわくわくにあふれています。描かれている鳥がすべてアメリカ大陸に生息している鳥なので、日本の鳥ばかり見ている私には余計にその印象が強く感じられました。
 フローレンスが生きた時代は、まだ博物学の時代です。調査や研究をするにも、鳥を遠くから観察するのではなく、まずは捕まえて調べます。また、捕獲した鳥から美しい羽根を取り、帽子に飾るのが流行った時代でもありました。そして、社会に出て活躍しているのは男性ばかりの時代。そんな時代にあってフローレンスは、自然の中にある生き生きとした姿こそが本来の鳥たちの価値だと、立ち上がったのです。

 この絵本は子どもの未来社が出版している社会に出て活躍する女性を扱った海外絵本の翻訳シリーズ4作目にあたります。出版社の方に聞いたところ、読者層と考えているのは小学校の高学年ということでした。主人公のフローレンス・メリアム・ベイリーさんにはたくさんの苦労と努力があったと思いますが、彼女の感じた本当のやるせなさや、逆境を乗り越える強さは、この絵本の中ではそれほど強く表現されていません。でも、壁の存在とそれをどう乗り越えてきたのかは描かれています。壁にぶつかるとき、人は孤独です。子供たちがいつか壁にぶつかるとき、この絵本を読んだ記憶はその子に、「つらいのは自分だけじゃない、乗り越えることもできるはずだ」と思わせてくれるような気がします。
 アメリカにはAudubon協会があり、今ではいろいろな参加型の調査が実施されていますが、フローレンスさんたちのような先人の存在があったからなんだろうなぁ、と思います。この絵本を手に取った子たちに、小さな一歩が未来を変えるんだと知ってもらえたら、いいですね。描かれているのは日本の鳥ではないけれど、鳥たちに、世界に目を向けさせてくれる絵本です。ぜひ、まわりのお子さんに。

高木憲太郎

特徴を掴みやすい絵で、絵本を楽しみながら、アメリカ大陸の鳥を覚えるのにもいいですね。絵本の最後には、野鳥観察の薦めが書かれていて、鳥を観察してみよう!と思った読者の背中を押してくれます。

監修された柴田佳秀さんによると思われる折り込みチラシが挟まれていました。バードリサーチも紹介していただいています。感謝。