「華麗なる野鳥飛翔図鑑」で飛翔写真にチャレンジしよう

 文一総合出版から昨年11月に発行された「華麗なる野鳥飛翔図鑑」を、著者(写真)のおひとりである髙野丈さんにお願いして、寄贈していただきました。
 我がまま言ってすみません。飛翔に関する調査やデータベースの今後の展望を見据えて、バードリサーチに1冊所蔵しておきたいと思いまして。

翼を広げた時に見える羽の模様、翼の形状など掲載されている飛翔写真には他の図鑑にはない情報が詰まっている。ここに載せた以外にたくさんもっと美しい写真が満載。本当の美しさは書籍を購入して堪能を。

 届いてから、中をじっくり拝見したのですが、期待通りでした!いろいろ想像が膨らみます。くっきり羽根1枚ずつが見れるからこその学びもありそうです。
 知的好奇心が満たされるだけでなく、鳥たちの羽って青空を背景にすると、こんなにも透けて美しいのかと、感動しました。また、野外で観察していると飛んでいる瞬間は一瞬ですし、真下からのアングルで飛んでいるところを見る機会が少ない、あんな鳥や、こんな鳥も掲載されています。
 帯に「史上初!掲載種すべてが飛んでいる」とありますが、全種の翼を広げたイラストがあるのも史上初ではないでしょうか?正確なものではないという注意書きがありますが、剥製標本や写真などをもとに描かれたこのイラストたちは、新しい気づきをもたらしてくれます。翼開長や羽の枚数がわかりやすくまとめられているのもポイントです。
 また、我孫子市鳥の博物館の学芸員として鳥の形態と向き合われてきていた齊藤安行さんによる解説も、翼の形状や飛翔に関したトピックスが充実しており、ほかの図鑑にはない特徴です。

 種ごとの解説ページ以外も充実しています。鳥の飛翔に関する解説がわかりやすく、航空力学とか工学系の難しい知識がなくても読めるので、鳥の飛翔について最初に学ぶ本としてもお薦めです。巻末には、飛翔写真を撮るための撮影機材やその具体的な設定値、良い瞬間を捉えるための撮影術など詳しい解説があります。これは、小堀文彦さんと髙野丈さんによるものでしょうか。目を引いたのですが、髙野さんに聞くと「撮影術のページは手の内を完全に明かした記事で、読者の撮影力上達を促す意図があります。」とのこと。まさに、そう感じました。興味のある方は、ぜひ、本を購入して、貴重な撮影術を会得してください。

華麗なる野鳥飛翔図鑑
齊藤安行 解説 / 小堀文彦 写真・イラスト / 髙野 丈 写真
A5判 / 192ページ
文一総合出版
https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-7256-4/Default.aspx
ISBN 978-4-8299-7256-4
定価2,640円(本体2,400円+10%税)

 昨春からバードリサーチのスタッフに加わった姜(ジャン)が翼の形状や飛翔行動に関わる研究をしており、なにかその方向で面白い調査やデータ収集ができないか、なんて話を事務所でしています。参加型で動画から羽ばたき周波数を鳥種ごとに求めてデータベースにするとかできたら、研究に使えるデータになって、おもしろいかも、とか。この図鑑本が広く読まれて、飛翔写真や飛翔動画の撮影技術が普及することを期待しています。

高木憲太郎