「愛媛県鳥類目録」を寄贈いただきました

 日本野鳥の会愛媛より創立50周年記念事業として発行された「愛媛県鳥類目録」を寄贈いただきました。1950年以降の記録が丁寧にまとめられています。各種の記録件数の季節的な変化がわかりやすい表になっていますが、記録の偏りをうまく補正して作図されているようです。それだけでなく、分布や個体数の経年変化の分析が素晴らしいです。それぞれ増加傾向がみられた20種と減少傾向がみられた20種がグラフと共に掲載されています。

 増加傾向がみられた種には、ソウシチョウやリュウキュウサンショウクイなど、そうだよねと思う種もありますがが、アオアシシギの個体数が増えているのにはおやっと目がとまりました。ちゃんと解説がされていて、加茂川河口で増えているけれど、そこでは砂泥質の河床が泥質化しかつ河床が上がってきたことで採食環境が変わったのではないか、とのこと。
 個体数の減少がみられた種の中では全国的にも指摘されているスズメやヒバリの減少が顕著で、分布が縮小している種の中では冬鳥が多く、ミヤマガラスやコクマルガラスも縮小しているとのこと。バードリサーチで初認の調査をしていた時期に西日本への渡来が少なくなり、北日本で増えるとともに西よりも北から早く初認される傾向があったので、そうした変化の現れかな?と興味深く拝見しました。
 垂直分布の経年変化がまとめられているのも特徴です。ソウシチョウの記録される標高が下がってきているのは、分布が広がった影響ではないかと思いますが、ヒガラとオオアカゲラの標高が下がってきているのは、なぜでしょうか?
 こうした鳥の変化を地域ごとにみていくと、新しい気づきがあります。特に西日本の府県にとっては、愛媛県での鳥の変化と共通の部分も多く、参考になるのではないでしょうか。
 日本野鳥の会愛媛のホームページ(https://ehime-wbsj.com/checklist)から購入ができるようですので、もし良ければ。最後に一言。創立50周年おめでとうございます!
高木憲太郎

ソフトカバー A4サイズ 132ページ 全ページカラー
ISBN:978-4-86802-131-5
製本版:2,750円(税込)
eBook版:880円(税込)
編著:上沖正欣・山本貴仁・小川次郎
編集協力:松田久司・秋山勉・木原涼帆・吉岡宏之・井戸浩之・新名亨・脇啓人
発行:日本野鳥の会愛媛
発行日:2024年12月31日