「BirdNET」というアプリがあります。コーネル大学鳥類学研究所のK.Lisa Yang 保全生物音響学センターとケムニッツ工科大学のが共同で開発した、機械学習(AIの手法の一つ)を使用した鳥の鳴き声を検出し、分類するアプリです。専門家や市民科学者が行う鳥類のモニタリングや保護の支援のために開発されました。Android または iOSで提供されていて、お持ちのスマホにダウンロードして、鳥の声を録音し、画面に現れたソナグラムを選択し、解析ボタンを押すと鳥の名前が出てきます。世界中の6,000種以上を識別することができるそうです。世界の約9割の鳥の声をカバーしてるとはすごいですね。
このBirdNETを利用した、様々なプロジェクトがあります。その中の一つBirdNET-piを試してみました。ラズベリーパイ(以下ラズパイ)という小型のシングルコンピュータを使って、鳥の声をモニタリングして、自動で識別、出現表をまとめるというものです。用意するものは、ラズベリーパイ、マイクロSD、マイク(少し性能がいい物)、電源、カードリーダー、設定のためのパソコンとローカルなネット環境です。
これまでも電子工作隊ネタで、ラズパイは水場のモニタリングとか、夜の鳴き声を録ろうとかして利用しています。古いラズパイが余っていたので今回はそれを使いました。本当は4Bモデル以上の上位モデルが推奨のようです(なので今回は機能をかなりセーブしてます)。
設定の方法は、ここに詳しいインストールガイドがあるので端折ります。パソコンとマイクロSDをつないで、ラズパイのOSを入れ、アドレスを固定してネット環境につなぎます。BirdNET-piのインストールは15分ぐらいかかりました。インストールが完了すれば自動で再起動します。これで準備完了。マイクをさして鳥の声が聞こえるベランダに置きました。実際はマイクは雨に濡れないように対策が必要でしょう。
ブラウザにラズパイのローカルアドレスを入れると写真の様な画面(1日の概要)が表れます。
出現表や、直前に検出された鳴き声、分析結果、分析中のソナグラムなどが表示されています。上の表は2024年4月29日の1日の出現表ですが、上位から、シジュウカラ、ヒヨドリ、キジバト、エナガ、ツバメ、ヤイロチョウ、メジロ、ヤマガラ、ミヤマガラス、サンカノゴイとなっています。ヤイロチョウやサンカノゴイは、どう考えても怪しいので、録音で確認するとそれらしい声は入っていませんでした。またミヤマガラスもハシブトガラスの間違いのようです。まあ、まず精度は100%ではなく、100%になることもありませんので、録音が残っているのは検証する上で大切ですね。
このBirdNET-piは固定局として、BirdWeatherというコミュニティネットワークに登録することができます。主にヨーロッパ、アメリカが中心ですが、世界で約1500ほど登録されています。日本にも数カ所あり、これは森の鳥の聞き取り調査のサイトと同じでした。別プロジェクトの音声もシェアしているようです。日本の鳥の資料も増やしたいですね。ネットワークが大きくなれば鳴き声資料も多く集まり、さらに有効なAIができるかもしれません。今年の調査研究支援プロジェクトでも、大坂さんの『皆で地鳴きから夜の小鳥の渡りを調べる』や、天野さんたちの『南西諸島の渡り鳥、『音』を使って追跡する!』など鳴き声を使ったプロジェクトがありましたので、将来連携できると素晴らしいモノになるのではないでしょうか。こちらの鳴き声モニタリングの成果も期待したいです。
しばらくは、簡単に出現表を作成してくれるので、どの鳥がどの時間帯に良く記録されるか見てみたり、検出できる音量や周波数(どうもフクロウが録れてない鳴いてるのに…。)のセッティング、日本の鳥の識別の精度など試してみたいと思います。