山中湖村でのコブハクチョウの説明会

コブハクチョウが全国の複数箇所で野生化し、定着しています。富士山周辺では河口湖や丹沢湖に新しくコブハクチョウが定着しつつあり、そのうち少なくとも一部は近くにある山中湖からきた個体であることが足環からわかっています。今回はこれらの地域でコブハクチョウの対策に取り組んでおられるコブハクチョウ調査グループに声をかけていただき、「コブハクチョウの個体識別管理説明会」で話をしてきました。

説明会の前に山中湖のコブハクチョウの様子を見学

山中湖村では1968年に山口県宇部市にあるときわ公園から4羽を導入して以降、村の鳥としてコブハクチョウに給餌を続け、数を増やしてきました。これまでは給餌をするものの個体の識別や逸出の対策はほとんどされて来ませんでした。それが、近年になって周辺にある河口湖や丹沢湖、さらには静岡県清水港などに山中湖から移動した個体が定着つつあり問題になっているということで、これまでの管理を見直していこうという話でした。今後、山中湖村としてまずは足環による個体識別をほぼ全羽に対して行い、正確な羽数や増減、移動、健康状態を把握できるようにしていくそうです。

私からは、コブハクチョウの基本的な生態やオオハクチョウ・コハクチョウとの違いについて説明し、個体数が増えて被害も出てきている千葉県の様子を紹介しました。また、これからの時代に即した責任ある飼育の例として、上記の宇部市ときわ公園の事例を紹介しました。ときわ公園では、2011年に鳥インフルエンザによるハクチョウ類の全羽殺処分を経験した後、飼育体制を大幅に見直してきました。現在は、鳥インフルエンザの感染リスクが高い冬の間は飼育施設内に隔離をし、その他の季節は毎年生え変わる風切羽を切羽して飛んで移動できなくした上で、湖の一部を区切って逸出しないようにした箇所で飼っています。来園者によるコブハクチョウへの餌やりも禁止し、きちんと管理された餌を食べています。

山中湖村では、これまでは村の鳥とはいえほとんど管理がされて来なかったこともあって、山中湖のコブハクチョウは自然の中で生きている野鳥だと思っている住民・観光客の方が多くおられるようでした。説明会では村の担当者、そして村長からも村の鳥として今後はより良い管理をしていくことが説明されました。野鳥ではなくて飼い犬飼い猫と同じように村で管理される鳥だということを周知していくことと、その状態に合った管理が進んでいくことを願っています。

河口湖で繁殖抑制対策のために使われる石膏製の偽卵の説明