お台場海浜公園の向かいに浮かぶ無人島、第六台場に2週連続で上陸してきました。東京都からの依頼を受けて、カワウのGPS追跡のための捕獲が目的です。いつもカワウの管理でお世話になっている長岡技術科学大学の山本麻希さんが代表を務める株式会社うぃるこがGPSの装着と追跡を、バードリサーチがそのための捕獲を、という分担で協力しての実施でした。

カワウの成鳥を捕獲するのは簡単ではありません。かつてバードリサーチでもいくつかのコロニーで捕獲し、衛星追跡による調査をしたことがありますが、カワウの繁殖のタイミング、飛翔ルートなどの行動をよく観察し、コロニーの地形なども踏まえた上で、条件がそろわないと捕まえることができません。
過去に第六台場で捕獲した時は、一度はうまく捕獲できたものの、時期が遅く夏になってしまった年は1羽も捕獲できませんでした。下見の調査の様子では今年は繁殖の進みが早いようでしたが、他の調査予定や各種許可手続きの関係で上陸できたのが6月後半と遅くなってしまいましたので、ドキドキでした。

上陸してみると、幸いにもまだ巣立ち前のヒナや巣立った直後の幼鳥が多数いる状況で、外から観察していたよりは繁殖の進みは遅かったようです。これは捕獲できそうです。第六台場は周囲を石垣が囲んでいて、内側は低くなっています。周囲以外にも土塁が設けられていたり、砲弾などを置いておくためなのか、石で組まれた横穴などもあり、戦うための場所だったことが伝わってきます。
島の内側に営巣しているカワウの親は飛び立つ際、垂直に木の上に飛びあがることはできませんので、島の内側に向かって飛び立ちます。周囲の石垣は1か所だけ切れていますので、内側に飛んだカワウはそこを通過して外洋に出ることができます。そこで、ここにかすみ網を設置して捕まえようというのが、最初の計画でした。
しかし、そううまくいくとは限りませんので、次善の策として上陸した僕らに驚いて慌てたカワウが地上に落ちてしまった(実はよくあることなんです)ところを手取りする準備もして挑みました。1回目の捕獲では結局、石垣の切れ間に設置したかすみ網では1羽も捕獲できませんでしたが、地上に落ちてしまったカワウを手取りで捕まえることができました。

しかし、カワウのプロフェッショナルとしては、このままではいけません。1回目の捕獲では待機の時間が長くありましたので、その間にカワウ動きをじっくり観察していました。すると、石垣の切れ間はほとんど通らない一方で、どうやら、別の場所にルートがあることを突き止めました。そこで、2回目の捕獲では、かすみ網を設置する場所を変更したところ、うまく網で捕獲することができました。GPSを装着したカワウたちが元気に、生き抜いてよいデータを届けてくれることを願いたいと思います。
高木憲太郎
